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第1回11枚小説 選者美風慶伍 個人表彰枠

【 全てが噛み合うならば  】

作 燈耶

 惜しくも上位入賞は逃しましたが評価点数を抜きにして個人的に表彰したいのがこの作品でした。
 そもそも今回のコンペでは『歯車』と言うメカニカルであり特徴がはっきりとしている物理的アイテムがテーマでした。それ故に、そのお題消化の方向性として、組織の歯車という組織論、ロボット・アンドロイド・オートマータと言った自動人形、歯車が使われている現実的なアイテム――、などが課題消化方法として出てくるのは明らかだったからです。そして密かにその想定範囲を超える作品が現れる事を期待していました。
 本作では明確に『歯車』と言う単語や事物が現れることはありません。僅かに2シーン、主人公・翔の心のなかで大切な家族との心の絆、そして家族間の心の交流が歪みを生み軋み、そして家族との絆が取り戻せた瞬間に、見えない歯車が爽快に回り出す――そのイメージとしてのカタルシスとして非常に強く印象を残しています。それ故に、心情描写での強い印象イメージと言う課題消化方法が素晴らしいと感じました。これからも良作を作り続けてください。

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