第2回11枚小説コンペ お題『ヒーロー』結果発表
受賞者 淡月悠生様 コメント
どうも、この度最優秀賞をいただきました。淡月悠生です。 素敵な作品がたくさんある中、私の作品が選ばれたことに正直驚いています。純粋に嬉しいです。ありがとうございます。 元々短編を中心に執筆していたので、企画を見た時にもピンと来て「いっちょやったろか!!」と気合を入れて書きました。心に染み渡るような作品になっていたらなと思います。 今回は素敵な企画に参加させていただき、誠にありがとうございました。これからも精進させていただきます!
受賞者 天崎剣様 コメント
テーマに惹かれ、衝動的に参加させていただきました。恐らく戦闘ものが多いだろうと踏んで、別のアプローチから攻めてみたので、まさかの高評価に驚きました。「父の背中」を主題に据えて、練りに練ったものです。審査していただいた皆様、主催の笹月さん、素敵な企画をありがとうございました!
受賞者 yolu様 コメント
飛び入り参加に近い状況で枠をいただき書かせて頂いたものが、賞をいただけたことに大変驚いております。この小説は、タイトルが最初に浮かんでから、ストーリーができたもので、悩みながらも、個人的にとても楽しく書かせていただいたものでした。改めて、笹月様、ナロラボ様、水色パンダ様、この師走の忙しいなか、運営や審査、そして、とても勉強になった素敵な企画をありがとうございます!
審査員特別表彰
【笹月風雲・特別表彰作品】
[ 虹のアルカンシエル ]
穂波じん
今回の応募作は大別して普遍的なキーワードとしての『ヒーロー』と、純然たるジャンル物としての『ヒーロー』とにわけられる。それらの中でヒーロー物として正統派すぎるほどに、きれいにセオリー通りに描かれた作品。特に主役であるアルカンシエルが朽ち果て敗北していくその過程の描き方が丹念かつ素晴らしく、そして色を失い『灰になる』と言う事の意味が強い説得力をもって伝わって来るのが大変好感度が高かった。文字媒体という色彩表現が困難な表現手段であるにもかかわらず『色による能力表現』と言うコンセプトを打ち出してきた事を強く評価したい。ラストシーン、先代アルカンシエルが灰化せず次代のアルカンシエルに引き継がれて初めて霧散したラストシーンがなにより胸熱だった。
【水色パンダ・特別表彰作品】
[ 私のヒーロー ]
yolu
今作を特別賞に選んだのは、ヒーローが変態だったからだ。いや失礼、この作品を読むとそう言いたくもなる。ストーリーは「主人公である彼女にとってのヒーローには、実はヒーローがいて、それが彼女である」というオーソドックスで予定調和に進んでいくが、そこがいいのだ。読者が予想する通りに展開していく爽快感と、そして女性ならではのフェチズム!乱雑に扱われた青年にときめく乙女など、男では思いつかないのだ。助けられた瞬間にも彼の胸板を観察しているなど、何というフェチ! あ、褒めてますからね? 男性作家では描かないであろう部分が作品のいいスパイスになっているのは、お読みいただければわかっていただけると思う。今回唯一といえるちょっとした色のあるシーンも良い彩だ。合間合間の彼女の心が駄々漏れなコミカルさが、血生臭を帳消しにしている。ここでもポイントは「変態」である。お題である「ヒーロー」の他の要素を入れ込んだことによる面白さもあり、今作を特別賞に選ばせていただいた。これからも良作を生み出していっていただきたい。
【ナロラボ・特別表彰作品】
[ イリーザ ]
[ ‐裏の世界の暗黒ヒーロー‐ ]
朧塚
ブッリギリでキャラクターが好きです。イリーザ、惚れました。 個人的な好みでは優勝です。 キャラクターの口調、ファッション、作品から漂う雰囲気、あらゆるものがぶっささりました。 あくまで企画作品としての話をすると「魅力的なキャラクターを描く」に専念しすぎて「ヒーロー」というお題の消化度がやや低い印象がありました。 1.作者、キャラクターにとってのヒーロー像を描く 2,ヒーローとは何かを読者に問わせる 等何かお題消化度へのコミットが申し越しほしかったです。ストーリーも一話完結というよりも連載物の一話という印象が強く完結しきれていないのが伸び悩んだポイントです。
ランク順個別評価結果
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:5
ストーリー:5
キャラクター:5
文章力:5
総合点:25
査読していて涙が出てきた作品。そして『11枚小説』と言うコンセプトをしっかりと理解している手本のような作品。主人公の内面の心のつぶやきを主軸として語られる物語世界を追ううちに主人公の彼が『なぜヒーローになりたいのか?』と言うテーゼが浮かび上がってくる。そして、そのテーゼの理由がクライマックスのシーンでの親友とのドラマの帰結として描かれた時に『そりゃヒーローになりたいよな』と納得させてくれる。その深みと説得力がドラマ上の感動としてすごい力を持っているのだ。そして主人公たち3人がたどり着いたラストシーンがまた素晴らしかった。お見事!
【水色パンダ】
お題消化度:5
序破急:5
ストーリー:5
キャラクター:4.5
文章力:4.5
総合点:24
個人的に一番気に入っているのがこの『僕がヒーローになるまで』だ。淡々としているのに、熱くさせてくれる。初読での、この作品の感想だ。ヒーローのお題をクリアしていてかつ、変身も力も強くなく、どこにでもいるかもしれない声が不自由な若者の話だ。火災現場に飛び込む行為は二次災害を誘発するものであり、決して褒められたものではない。ミイラ取りがミイラになるなんて話はどこにでも転がっているのだ。だが、そこで語られる〝どうしてヒーローになりたかったのか〟という理由に胸が熱くなった。自分がヒーローを目指すことになった原因である親友を、目の前で失うことはできない。痛いくらいにわかる心理だ。このための伏線が旨く前半で埋め込まれており、本当にあっさりと騙された。一人称の特性を使ったトリックともいえる。運よく助かり、その後の彼が、また素朴でよい。今ではそこかしこで見るようになったご当地ヒーローの衣装に身を包み、ゴミ拾いなどの地域への貢献をしている。『きっと、もう本物のヒーローだよ』彼唯一のセリフがすべてを物語っている。悪を倒すヒーローが恰好いい事に異論はないだろう。だが、彼のように地道に活動するヒーローもまた、恰好いいのだ。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:4
ストーリー:4.5
キャラクター:3
文章力:4.5
総合点:20
4000字で三人の関係性、キャラクター、ある程度まとまったストーリーを書けているのが素晴らしいと感じました。ちゃんと作品内で登場人物がエピソードを経て変化している部分も好印象でした。キャラクターが若干淡白に感じられた部分がやや物足りなく感じましたが、企画作品としてはとても上手くまとまった作品だと思います。
平均総合点:23
【笹月風雲】
お題消化度:4.5
序破急:4
ストーリー:4.5
キャラクター:5
文章力:5
総合点:23
採点と判断に苦しんだ作品。非常に良質であり完成度は高い。一人のヒーローの致命的な挫折とその次世代への継承のドラマ。ヒーロー――と言うよりはより現実的な『正義の味方』のあり方と『父から息子へ』家族の絆のドラマだ。息子はヒーローであった父の挫折後の残酷な現実を目の当たりにして打ちひしがれる。ドラマの悲劇的ファクターとして作者が狙っている物は十分にわかる。そしてそれを息子の微妙な心の機微を察した父親が次代のヒーローを託すシーンが見事である。しかしだ、ラストシーンでもうひと頑張りして息子が2代目ラティオとして立派に一人立ちする。――そこまで踏み込んで描いてほしかった。父の戦う姿への息子の憧憬で始まるのなら、子の覚悟と巣立ちを見守る父の視点で終わるべきだ。4400字の壁は厚い。現状の息子への継承シーンがちょうど切りが良いのは分かる。だがさらなる推敲を加えてもう1シーンで締めてもらいたいと思うのは横暴だろうか? 良質の作品だからこそさらなる上を目指してもらいたい。
【水色パンダ】
お題消化度:5
序破急:4
ストーリー:5
キャラクター:4.5
文章力:4
総合点:22.5
熱い。最後にかけての彼の心の揺らぎと決意が、熱い! 華々しいヒーローの悲惨な面をこれでもかと思い知らされても、やはり血なのか。お題消化度は満点だ。構成としては、序盤は気分を沈めて後半に向けて一気に読者の感情を上げていくスタイル。個人的に好み。いわゆる感情曲線を駆使しているのはワザマエ。文章は特筆すべきものはないが、確実に初読で読者が理解できる書き方をしているために読みやすくわかりやすい。強い武器をお持ちだ。主人公である彼の心の移ろいをきっちり書上げていることで、強い没入感を創り出している。個人的にこのような話に弱いので、やや主観が入ってしまって申し訳ない。
【ナロラボ】
お題消化度:5
序破急:4
ストーリー:5
キャラクター:4
文章力:5
総合点:23
4000字制限で書きたいこと・伝えたいことを絞り込んだ素晴らしい作品だと思います。過去と現在、理想と現実のギャップを利用し、主人公にとってのヒーロー像を表現するのがとても上手でした。また読者にも考えさせる内容だったと思います。ただ「カッコいい面」を書くだけでヒーローを描写するのは比較的簡単なのですが、「マイナス面」を描写することで主人公にとってのヒーロー像をより分かりやすく表現しているのが高い評価ポイントで「画としてのヒーロー」を超えて「人物像としてのヒーロー」を表現できていたと思います。最後に主人公が「それでも父親と同じ選択をする」描写にぐっと来ました。
平均総合点:23.83
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:5
ストーリー:5
キャラクター:5
文章力:5
総合点:25
すべてを読み終えてから『そうだったのか!』と思わず感心させられた。減点方式で評価した場合、減点するところがどうしても見当たらない。一人称視点の特徴を逆手に取りフルに活かしきった大傑作。また冒頭部の語り出しが説明口調のため、滔々とナレーションが入るのか? と思いそうになるがこれもまた主人公のヒロイン視点の〝語り〟だと言う事に読後に気付かされた。ヒロイン一人の視点の中で様々なストーリーファクターが伏線として散りばめられていて、それがラストシーンで一つにつながった瞬間に驚かされる。作者のプロット構成力の確かさと描写力にただただ脱帽である。しかも4400字きっかりの余り無し! 凄すぎる!
【水色パンダ】
お題消化度:5
序破急:4
ストーリー:4
キャラクター:4.5
文章力:4
総合点:21.5
なんという変態w 勘違いしてはいけない、これは誉め言葉だ。ヒーローのお題消化は文句ない。それがたとえ変態チックな妙齢の女性でもだ!構成は、オーソドックスな形で人物登場、世界観、事件発生からの急展開でハッピーエンド。先読みも容易で強力なフックはないが安心して読めた。同時にストーリーもありふれていて事前情報もなされていることから、特筆するものはないが、安心して物語を終えるという読者には優しい点は良いと思う。キャタクターは凶悪で変態だ。アクが強くてサイコパスよりも目立つ。インパクトと造形は十分だろう。文章は一人称で、やや違和感がある箇所はあるが概ね平均よりは書けていると思う。読みやすく理解しやすい文章は、強い武器である。総合的には平均よりも上と判断した。欲を言えばストーリーにもうひと捻りあれば、加点できたと思う。
【ナロラボ】
お題消化度:2.5
序破急:3.5
ストーリー:4.5
キャラクター:4
文章力:5
総合点:17.5
キャラクターがとても生き生きしていました。特にセリフ回しは個人的にはとても好きなので作者さんが作ったSS集なんかあったら読みたいです笑。ストーリーに関しても4000字でよくひっくり返すような展開の作品が書けるなぁと勉強になりました。気になった点としては、一人称と三人称がやや混ざっている印象がありました。序盤で一人称だと提示するのがやや遅いので気づくのに少し時間がかかったのが後に引いているだけかもしれませんが、戦闘描写と序盤/一人称視点の地の文がやや切り離された印象を持ちました。冒頭の説明をどこかで上手く会話や地の文に混ぜられると読みやすいかもしれません。文字数の問題もあると思います。
平均総合点:21.33
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:5
ストーリー:4.5
キャラクター:5
文章力:4
総合点:23.5
ある意味『より現実的でリアルな目線での正義の味方』をとても楽しく描いた作品。元警察特殊部隊で閑職に追いやられた男、その男になにやらカマをかけてる一癖も二癖もある男たち。腹の底でお互いにニヤニヤ・ゲラゲラ笑いながら本気の戦闘を楽しんでる様がリアルに浮かぶ。お題消化、構成、キャラクターの存在感。いずれも高ポイント。ラストでの『実はこうだった』と言う打ち明けスタイルもストンと腑に落ちる。だがそれだけにセリフと地の文の並べ方がすごい見づらいのが惜しく文字を追っていてイメージを脳裏で浮かべづらかった。オチが読めてしまうのも減点。
【水色パンダ】
お題消化度:3.5
序破急:3.5
ストーリー3.5:
キャラクター:3.5
文章力:4
総合点:18
なれないと読みにくい文体だが、スピード感があり言葉ごとで映像が浮かぶ利点あり。会話のセンスもハードボイルドであり、個人的に好みである。警察に就職した仲間を迎えに来た、という流れだろうが、その中でのヒーローの定義がいまいちわかりにくかった点で4とした。彼らは何を守るために戦っているのか。それが欲しかった。構成的には山場である戦闘シーンが長いが、ダレを防ぐために会話を挟むなど手をうっているのが分かる。冒頭がややわかりにくいので、状況が分かるような改善を期待したい。描写は端的なのだろうが頭に絵が浮かばないので、何をしているのか分からないまま読んでしまっていた。この文体ならではの苦手な部分か。最後に小隊長が転職してえらい出世してるのに笑わせてもらった。
【ナロラボ】
お題消化度:3.5
序破急:4
ストーリー:4
キャラクター:4.5
文章力:5
総合点:21
ワンシーン特化で「作者が何を描きたいのか」がとても分かりやすかったです。キャラクターの掛け合い、地の文、個人的には読んでいてニヤニヤしてしまいました。4000字以内という制限をよく理解されていると思います。 惜しい点としては設定がやや凝っていることと、キャラクターの人数が多いため、前半でストーリーに入れずやや置いてけぼりにされてしまう印象がありました。しかし上記の点を含めても個人的には大満足でした。
平均総合点:23
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:4.5
ストーリー:4.5
キャラクター:4.5
文章力:5
総合点:23.5
ものすごく、とてつもなく惜しい作品。未来の見える女性と、不格好でも献身性にあふれた好青年の運命をめぐるドラマ。コンセプトとしてもドラマとしても十分にトップを狙える位置にあった。だがひとつだけ惜しい点がある。主人公がヒロインを救いヒロインの申し出から二人が付き合い始める下りだ。この部分の展開とつなぎがやや慌ただしく心理的な移ろいにおいて〝説得力〟を発揮しきれていない。男性との交際を強く求める女性の真剣さと、戸惑いながらも彼女に惹かれそれを受け入れていく男性の純粋さ優しさと言う相克する二人の姿が、ラストシーンでの感動の真実へとつながる〝ドラマ的伏線〟が仕込みきれていなかった。文字制限まであと290字。それを費やしてさらなるドラマ性を注ぎ込んで欲しかった。
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:3
総合点:17.5
確定した未来を、自らの身を持って覆す自己犠牲をヒーロー的行為と訴えている。賛否はあろうが、これもヒーローだ。読後に読み返すと、前半に布石があって、なるほど構成を考えてあるな、と感じた。結構淡々と進んでいく関係で、涙腺を刺激するような場面でもするっと通過してしまうのは五感描写が不足しているからだと思われる。この辺を追加していくと、読者に訴える作品になってより良くなると思う。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:4
ストーリー:3.5
キャラクター:4.5
文章力:4
総合点:20
凝ったストーリー展開を4000字で作り上げたことが素晴らしいと感じました。時間遡行系の作品は物語の構造が複雑になりすぎてイマイチ理解できないことも多いのですが、王道に則った構成がとてもわかりやすかったです。惜しむらくはややオチが予想できてしまったのでシナリオを楽しみがやや薄れてしまったこと、お題にやや沿えてなかったかな?という部分に物足りなさを感じました。
平均総合点:20.33
【笹月風雲】
お題消化度:4
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:5
文章力:5
総合点:20
キャラの個性の際立ち方がすごく目立つ作品。そして今回の『ヒーロー』と言うお題の消化がいかに難しいか? を象徴するような作品。登場人物が良くも悪くも二人しか垣間見えてこず、果てしなく未完成の事物を壊そうとする女性と、共感と説得を果て無く繰り返す殴り魔男の奇妙な交流劇しか伝わってこないのだ。(説得者のキャラの成り立ちはすごい面白く魅力的だったが)ヒーローをヒーローたらしめる存在が何なのか? と言う点において文字として描かれない『紙面の向こう側に存在するであろう〝それ以外の多くの人々〟』が感じ取れないため、奇妙なまでに強くキャラ立ちした二人だけが目立っている結果となっている。
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:4
文章力:4
総合点:19
いっけん正義に見えて実は自らを正当化するだけの者をヒーローと呼ぶのか、という疑問を投げかける形でのヒーロー像を描いていると感じた。会話を軸に展開される形だが、山場に心理描写や五感描写がが薄かったのが残念だなと感じた。人の感性や考えがテーマなので構成的にはもう少し葛藤の場面が欲しかったと思ってしまった。キャラは、マッドテイストかとも思ったが悩むという行為が、人間らしく感じられた。文章は平均よりは上と感じるが、巧いと言えるほどでもない。引き込むような文章が書けるようになると、さらに感情に訴える作品を書けるようになると思う。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:4.5
ストーリー:4
キャラクター:4.5
文章力:4.5
総合点:21.5
表現力がとても高い作品だと感じました。メカ同士がぶつかり合う戦闘描写がとても凝っていて好きな人にはたまらない描写ではないでしょうか。「クラッシャー」がエピソードを通じて概念的に真逆の怪人になるというオチにもニヤニヤしました。個人的にはクラッシャーの「中途半端なものは全て崩れてしまえばいい」という思想がとても好みでした。
平均総合点:20.16
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:4
ストーリー:4
キャラクター:5
文章力:5
総合点:23
悪のヒーローと言う、ある意味、通俗的な〝正義の味方〟の逆張りを仕掛けた野心的作品。ヒーローと言うお題に対してある種爽快なアンチテーゼの追求としては大成功している。なによりイリーザと言うダークヒーローのキャラ造形が巧みであり、若い女性であるという以外ビジュアル的なデータはほとんど提示されていないにも関わらず、その言動や仕草などから溢れ出る明確な個性は強烈なインパクトを読者に残す。しかしドラマ的な面で長編作品の中のワンシーンと言う印象を拭い切れない。シナリオ面でもう一歩踏み込んで欲しかった。
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:3.5
ストーリー:4
キャラクター:4
文章力:4
総合点:19.5
しれっと残忍で悪びれない自分に正直なタイプのヒーローでわかりやすいキャラだ。正しい、というのは立場で変わってくるもので、良い悪いではなく合う合わないなんだと思わせてくれる作品だ。「でもまあ、誰かに対してのヒーローなんて、善悪問わず自己満足なんじゃないかしらねぇ」という最後のセリフが端的に物語っている。文章も読みやすく読み手に伝わりやすいつくりになっているのも良い。山場が弱い構成がちと残念ではある。ホストとの男をなぶるシーンで、もう少し突き抜けた描写があれば緩急がついたかもしれない。
【ナロラボ】
お題消化度:3
序破急:3
ストーリー:3.5
キャラクター:5
文章力:4.5
総合点:19
ブッリギリでキャラクターが好きです。イリーザ、惚れました。 個人的な好みでは優勝です。 キャラクターの口調、ファッション、作品から漂う雰囲気、あらゆるものがぶっささりました。 あくまで企画作品としての話をすると「魅力的なキャラクターを描く」に専念しすぎて「ヒーロー」というお題の消化度がやや低い印象がありました。 1.作者、キャラクターにとってのヒーロー像を描く 2,ヒーローとは何かを読者に問わせる 等何かお題消化度へのコミットがもう少しほしかったです。ストーリーも一話完結というよりも連載物の一話という印象が強く完結しきれていないのが伸び悩んだポイントです。
平均総合点:20
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:5
ストーリー:5
キャラクター:4.5
文章力:5
総合点:24.5
正直、ヒーロー物の『胸熱展開』が大好きな人にはたまらない逸品である。実際私としては読んでいて卒倒しそうになった。〝文章〟と言うモノクロームの世界の上で、これでもか! と舞い踊る極彩色のたファンタジア。そしてそこに描かれているのはまさかの〝敗北ネタ〟である。実はヒーロー物としても、人間ドラマとしても〝敗北〟と言うのはとてつもなく描きにくいものだ。敗北と言う負のファクターをどう次のシナプシスへとつなぐのか? そしてどう次なるドラマの盛り上がりへと再生するのか? 一歩でも間違うと敗北感と虚しさだけが残る。また敗者が再生する〝その理由〟が納得の行くものでないとその後のドラマが生きてこないのだ。だが本作は〝色〟と言うファクターをフルに活かすことで、敗北と蹉跌と再生と継承の熱すぎるほどのヒューマンドラマを描いてみせた。読後、タイトルを見るたびにその意味を理解するたびに目頭が熱くなった。
【水色パンダ】
お題消化度:3.5
序破急:4
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:4
総合点:18.5
「欠点を恐れるな、未来はまだ灰色じゃない、明日に虹を描いてみせる!」恐らくこれが言いたいことだったのだろうが、ちとこれではお題から離れてしまう。ヒーローは不滅だ!的な終わり方だったのなら、お題を消化していると言えたかもしれない。ヒーローたるアルカンシェルが変身ヒーローでなくても同じ意図の作品ができてしまうので、その分引かせてもらった。構成については、アルカンシェルが相討ちになる場面が小さい山場、そして最後に少年が引き継ぐ箇所が山場となるのだろう。最後に変身させて終わるのも綺麗と言える。文章は過不足なし。表現も詩的で独特。戦闘シーンも具体的ではないものの頭に映像が浮かぶ。なかなかのワザマエ。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:2.5
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:3.5
総合点:17
特撮ものの文章化に挑戦した意欲的な作品ですね。キャラクターの役割が分かりやすく、設定の凝ったヒーローショーを初めて観るような気持ちになりました。戦闘シーンは好きな人にはたまらないと思います、
気になった点としては敵キャラクターの見た目における描写が少なく、急にキャラクターが四つの腕を持っていたりする描写が出てきた部分や、戦闘における色の豊かさにややつっかえてしまいました。
キャラクターが絞られている分、何が起きているのかは分かるのですが、ミステリのようにストーリーを深読みするタイプの作品でもないのに何度も読み返すようなことが起き、可読性がやや薄かったです。ただ作品内容的に好きな人には刺さるタイプの作品だと思います。
平均総合点:20
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:5
文章力:5
総合点:22
この手の『ひとり語り物』のスタイルは私もよく書くのだが、書き手がかなりの力量を要求される。一人の視点と一人の語る言葉だけで地の文章も無しに、複数の視点と人物を匂わせ、さらには世界観と設定とドラマを読者の脳裏に〝想起〟させる事が必須条件となるからだ。逆に言えば読者の想像力をそれだけ強力に呼び覚ますだけの〝魅せる〟ような〝ひとり語り〟が描けてないと意味がない。その意味ではすごいインパクトがあると同時に、クラーケンと言うヒーローのやさぐれっぷりやヒーローと言う存在の抱える矛盾や世界の裏側のずるい現実や残酷な真実がこれでもかと伝わってくるのはお見事である。だがほぼ9割近くがクラーケンの〝愚痴〟であり、そこからさらに畳み掛ける展開がほしかった。そうすれば問答無用でSランクは決まりだった。
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:4
ストーリー:3.5
キャラクター:4
文章力:4
総合点:19.5
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」ヒーローの裏側を書いた作品というところか。インスピレーションを受けた楽曲は知らないが、昔っからその手の曲はあふれているので、まぁ、彼も掌で踊る存在ではあるのだが。ロケット弾でやられるとか、リアリティがありそうな書き方は良いと思う。「けどな、誰かを慮り、何が自分たちの人生をしみったれたものにしているかを調べて考えて、突き止めることは、そう難しいことじゃないだろ?」このセリフは耳しみるなぁ。作者の主張がストレートに出ているんで、好き嫌いが出てしまうだろうが個人的には好みである。構成として、一人語りなので序破急などに当てはめるのは厳しいが、理由を述べるということで破を作り出していると思う。引き込む力がある文章なので、それなりに高い文章レベルだと思う。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:2.5
ストーリー:3
キャラクター:4.5
文章力:3.5
総合点:17.5
B級クリーチャー映画好きとしてはタイトルを観た瞬間に「とてつもないB級感」を感じ期待しましたが、作風は想像よりもシリアスでしたね。ごめんなさい。独特の一人語りで物語を進めていく作風にどんどんのめり込んでしまう感覚になりました。ただ「序破急を重視した一本の短編」として評価した場合に限り「まだストーリー始まってないかなぁ」という気持ちになりました。物語の書き出しや架空人物のエッセイとしては素敵だと思います。
平均総合点:19.66
【笹月風雲】
お題消化度:3.5
序破急:4
ストーリー:4
キャラクター:5
文章力:5
総合点:21.5
キャラクターの〝濃さ〟が全ての物語る作品。主人公であるポチョムキンの存在感とインパクトがあまりに強力であり、ヒーローと言うお題以前にポチョムキンと言うキャラクターを皆がどうするのか? と言うストーリーコンセプトとなってしまっている。ヒーロー物ではなく〝ポチョムキン物〟と言っていいだろう。それゆえに強すぎるキャラクターインパクトがそれ以外の要素を全て喰ってしまっておりラストシーン周辺から〝書き手が力尽きた感〟を漂わせる結果となっている。警察職員の人々の労苦があえてヒーローと呼べるのが最大の救いか。
【水色パンダ】
お題消化度:4.5
序破急:3.5
ストーリー:4
キャラクター:4
文章力:4
総合点:20
突き抜けっぷりが潔くって、心意気はよし!個人的には大好きだ!ヒーローという定義に「困った人々を助ける」という回答を与えているあたりが人間らしくってとても良いと感じた。ただ、その「困っている人」をどうとるかが問題なのだが、独りよがりの正義とはよくあることだ。この作品はそのあたりに着目したのだろう。構成は、突出したものはないが基本は抑えていると思う。やや盛り上がりには欠けたか。文章は読み手を考慮している書き方で、短文を多用したテンポの良い物で、かなり書き慣れている印象を受けた。筋肉への愛は十分感じられた。マッスルマッスル!ただ、オチの全員懲戒解雇はかわいそうだと思った(笑)
【ナロラボ】
お題消化度:3.5
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:3
総合点:17
キャラクター説明が特徴的で、ニヤニヤしてしまいました。流行りのゲームの名称をもじった固有名詞や「ズボンを脱げぇ」といったセリフがいちいちおっかしかったです。惜しむらくは独特のテンションにやや置いてけぼりにされてしまったような感覚になってしまったので、若干の読みにくさを感じてしまう部分がありました。
平均総合点:19.5
【笹月風雲】
お題消化度:4
序破急:4
ストーリー:3
キャラクター:4
文章力:5
総合点:20
アジアンカンフー最大のヒーロー、ブルース・リーについて描いたある種の『歴史ヒーロー物』と言える作品。実在する人物がモチーフだけに一般的な娯楽アクション物とはまた異なる魅力の引き出し方が必要となる。幼い頃のブルース・リーが師匠から提示された『水を殴れるか?』と言うテーゼ。それが作品を貫くシナプスとしてラストシーンまで生かされていれば、史実の中のブルース・リーの魅力を紙面上のエンターテイメントとして開花させられただろう。実際それを期待していた。だがラストシーンではその最大のテーゼについての〝結論〟が示される事無く親子の懐かし話にすり替わってしまっている。ブルース・リーを最後まで主役として描ききるべきだった。
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:4
文章力:3.5
総合点:18.5
カンフー映画という雰囲気は十分出ていた。水を殴る方法を考えてみろ」というセリフを通じて人生を教える、というテーマが見られ、なるほどと思った。お父さんにとって、少年にとってのヒーローはブルースであり、彼の志が大人になっても消えないことを願う。構成は単調だが、オチもあるので良し。画面の中の戦闘シーンがだらだら続く印象があるので、メリハリを利かせた戦闘シーンの書き方を覚えると、もっとい映えると思う少しわかり難い文章だと感じた。主題が変わっている文章をくっつけると、読み手が混乱する。主人公の描写は細かいのだが相手との距離などが書かれておらず、チグハグな印象を受けた。スピード感を出そうとしているように感じられたが、分かりにくさが足を引っ張っていて、この手法では読者の読む速度は上がらない。冗長さをなくせば、速度も上がると思う。読者に伝わりにくい書き方をしているのがもったいなく思えたし、読み手を意識した文章を書けるようになると、もっとよくなると思う。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:4
文章力:5
総合点:19
4000字だけでも溢れんばかりの文章の個性を感じる個人的には大満足の作品でした。特に戦闘シーンは、映像的に思い浮かべやすく「カンフーアクションの文章化」に成功していると感じました。ストーリー・序破急に関して他の項目より低い点数が出ていますが「元々評価項目に沿って書いているつもりがない作品」という印象を個人的には受けましたのであまり気にされる必要はないかと(無理に評価項目に合わせた作品を書くのは作品の個性を殺すと思うので)。一つのシナリオが作りこまれた作品というよりも、作者様の描写力を他人に説明するサンプルとしては本当に良いものが出来上がっていると思います。
平均総合点:19.16
【笹月風雲】
お題消化度:4.5
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:5
文章力:5
総合点:20.5
もともとが10万字レベルで書くべき内容を11枚の狭小スペースに押し込むためにドラマの最重要ポイントを除いて大幅にあらすじ化・設定公開化するという反則ギリギリの手法で成立させた作品。バトルハイファンタジーとして設定やメインストーリーは完成度高く二人の主役の悲劇性も素晴らしい。それだけに過剰な圧縮が故に省かれてしまったドラマの数々の存在が垣間見えるので慌ただしさを感じてしまう。正直言うね? これ11枚でやるネタじゃないでしょう!(褒め言葉)
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:4
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:4
総合点:19
無常感、やるせなさなどのダークファンタジーの空気がよく出ていたと思う。レナにとってアスカがヒーローたり得たのか。自分の信条に対して素直なところに感じ取ったのか。4400文字の中に収めるにしては話のスケールが大きすぎた感はあるが、よくまとめたと思う。とはいえ、もう少し場面を絞った方がよかったのかもしれない。文章は、難読漢字を多用して硬い文を作り出していて、それがダークファンタジーとよくマッチしている。三人称にしては心理描写も多く、作者の高い技量がうかがえる。序破急は序から過去への流れは良いと思う。ラストの骸を纏う場面が、良かった。
【ナロラボ】
お題消化度:2.5
序破急:4
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:4
総合点:17.5
設定・伝えたい内容をよく4000字に詰め込んだ、というのが感想です。どこを削るのかに苦労されたのがよくわかります。使用している単語のセンスや地の文の程よいダークな雰囲気などが個人的には好みでした。点数が伸び悩んだ点としてはやはり内容量です。「何を書くか」を絞り切れば、より面白さが凝縮された作品が出来上がると思います
平均総合点:19
【笹月風雲】
お題消化度:4.5
序破急:4.5
ストーリー:4.5
キャラクター:3
文章力:5
総合点:22
『主人公が自分自身の内側から見た内面世界』をひたすら主観的に描いた異色の作品。ヒーローになりたいのではなくヒーローであろうとする男。ヒーローであろうとする故に己の行動を自縄自縛的に縛り付けているのだ。主人公のその視点は妄想的と言っていい。悲喜劇とも取れる彼の行動であるが、結果として一人の女性を救い出し、一人の少年との主人公の家族の絆のドラマはきちんと成立してる。序破急の枠組は高完成度だ。だがその主人公の強烈すぎる視点が読む者を選んでしまう。古典文学のドンキホーテの様な自意識にもてあそばれる男の喜劇ととるか、ヒーローであろうと自分に言い聞かせる男の自問自答のドラマととるか、分かれるところだ
【水色パンダ】
お題消化度:4
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:3
文章力:3
総合点:16
絵本的柔らかな文体で、ゴミでもなんでも拾う男が主人公で彼がヒーローを体言する話だ。意志を通す者をヒーローと呼ぶのなら、彼は間違いなくヒーローだ。文章自体は柔らかく、巧くはなさそうに見えるが、なんとなくヘタウマな絵を思い出してしまったくらい裏に何かあるのでは、と勘繰ってしまった。構成としては、山場もあり、文字数をさいているのを鑑みるに、わかっているのでは?と思わされる。キャラ、周囲の描写が少なく、必要最低限に抑えているのか、単に不足しているのか、判断に困るところだ。全体的に稚拙という印象が拭えないのが残念だ。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:3
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:4
総合点:18
非常に読みやすい作品だと感じました。一人称視点で書かれていることも影響してかキャラクターの思考がとてもわかりやすかったです。個人的には一文一文をもう少しひねって欲しかったかなぁというところが物足りないポイントかなぁと。
平均総合点:18.66
【笹月風雲】
お題消化度:5
序破急:4
ストーリー:4.5
キャラクター:5
文章力:5
総合点:23.5
11枚小説において長大な物語世界を前提とした作品が投稿されるのは良く有るケースだ。だが、その多くは肝心な11枚の紙面に描かれている部分だけでしっかりとオチがまとまっていない事が多く成功しているとはいい難い。そのあとの本編でドラマ本体や世界観の全体像が明かされる事を前提としているからである。本作の場合『作品世界観の全体像』『物語の前提条件となる重要設定』『重要ファクターとなるメイン登場人物』が完結かつ明快に明示されており、また11枚の紙面に現れる部分で二人の登場人物のドラマがしっかりと纏まっている。長編の一部であることがストレスにならず読後感もいい。さらなる本編を見てみたくなる快作である。
【水色パンダ】
お題消化度:3
序破急:4
ストーリー:4
キャラクター:3.5
文章力:3.5
総合点:18
「狛犬」が能力者なのだが、そこにヒーロー性が見えないのが残念。お題はヒーローなので、もう少しらしい展開にして欲しかったかな。デストピア作品になるのだろうか。風景描写がないのでそのデストピア感が薄いかも。モラルハザード的描写が欲しかった。視点移動に唐突感があって、どのキャラを主に追っていけばよいのか迷う。中心人物はあの女性であろうから、彼女視点を中心に組み立てれば、もう少し印象は変わったかも。話のつくりは山場をおさえて盛り上げているのは良いと感じた。連載の第一話的終わり方だが、これもありかな。文章は良くも悪くも普通。冗長さが少なく読みやすい点はとてもよい。
【ナロラボ】
お題消化度:2.5
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:3.5
文章力:2.5
総合点:14.5
凝ったキャラクター設定の説明に文字数を割きすぎてしまったかなぁと非常にもったいない印象でした。各キャラクターの職業や地の文の書き方は非常に好みで、もっともっと続きを読みたいと感じましたがストーリーのケツが決まっているためか急に物語が終わってしまったような感覚になりました。各項目全てが途中で終わってしまった感覚になったので個人的には長編で作品を読んで観たいかなと思うと同時に「ちょっと序盤に設定詰め込みすぎかなぁ」という気持ちにもなりました。
平均総合点:18.66
【笹月風雲】
お題消化度:3
序破急:3.5
ストーリー:3
キャラクター:3.5
文章力:5
総合点:18
本来1万字~3万字程度で書くべき作品を11枚小説の狭小スペースに落とし込んだ――と言う印象が強い。複数のシーンのザッピングにより進むと言う形式がわかりにくさに拍車をかけている。そのためお題である『ヒーロー』と言うテーゼが一体どこにあるのか? と言う事が紙面から伝わってこない。登場人物たちの奇妙かつ深謀遠慮な行動と不可解な殺害手段。これが何を意図しているのか? ドラマの帰結としてのラストシーンを期待したが最後まで読んでも、またさらにここから続くようにしか見えないのがもどかしかった。
【水色パンダ】
お題消化度:3.5
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:3.5
総合点:17.5
お題であるヒーローは、鍛錬した男をさしているのだろうか。復讐を誓い、狂う寸前の男を救った、という行為にヒーローを見出したのか。復讐の無常さを教えるために、鍛錬を指せたのか。主人公の心の動きがイマイチ把握できなくて判断が下せない。読者に場面の想像を任せる割合が多いためだろう。男ふたりの場面でも主語が男しかなく、どちらの描写なのかがわかりにくい。読み手にわかりやすく書いてもらえると助かる。構成としても淡々と進んでしまい、葛藤の山場もなくいつの間にか終わってしまうように感じた。完全三人称で綴られているので、これは仕方のないことなのかもしれないが。
【ナロラボ】
お題消化度:4
序破急:3
ストーリー:4
キャラクター:3
文章力:4.5
総合点:18.5
とても読みやすい作品で「設定項目がナロラボ杯(ナロラボが自身のブログで行なっている企画)だったらもっと良い得点が出そうだな」と感じました。特に「序破急」に沿った大きな波があるわけではないため項目で良い点数を出していませんが、多人数視点で一つの事件を掘り下げていく構成は海外ドラマを観ているような感覚になりました。個人賞はキャラクターの個性が強い別作品を選びましたが、作品の中身や文章の書き方はとても好みだったので作者さんの他作品を読みたくなりました。
平均総合点:18
【笹月風雲】
お題消化度:4.5
序破急:3.5
ストーリー:3
キャラクター:3.5
文章力:2.5
総合点:17
ある意味、ものすごく惜しい作品。その物語のコンセプトが『闘技場の劇と思われていたものが実は本物で、地下から湧き出てくる異形の群れを日夜必死に封じている』と言う悲劇性あふれる物語は胸に迫る物がある。その意味ではお題消化は満点レベル。だが、独自性と叙情的な表現を重視した文章が裏目に出ている。はっきり言えば『すごくわかりにくい』昨今の小説界において古典純文学の人気がなぜイマイチなのか? その意味を考えてほしい。難読語や独特の韻を踏んだ表現は諸刃の剣なのだ。文章の伝わりにくさ故にストーリーの良さもキャラクターの魅力も伝わってない。行間を詰めてるのも読みづらい一因。
【水色パンダ】
お題消化度:3.5
序破急:3.5
ストーリー:3.5
キャラクター:3.5
文章力:3.5
総合点:17.5
かなり読みにくい文章だが、講談家的リズムで読むと、ぴったり一致する。扇で机をバシバシたたきながら読むと、いい感じに理解できる。表現が多彩な反面、難読で読者に伝わらない。読み手を意識した文章を心掛けていただきたい。作風が薄れてしまうかもしれないが、読み手が分からなければ、伝えたいことも伝わらないのではないか?民衆の娯楽としてヒーローショーが求められる世界で、苦悩する男を描いているのだけど、ヒーローを書いているのではなく、その役目に対しての苦悩なのでこの点数にした。わかっている結末に向かうやるせなさを、ヒーロー像として提示しているのか。それとも単にヒーローショーでの葛藤を描いているからなのか。構成としては、ボスとの戦いが山場になるのだろうが、盛り上がりのかけるのは心理描写の不足からだろうか。それとも描写が頭に浮かばないからだろうか。
【ナロラボ】
お題消化度:3.5
序破急:2.5
ストーリー:3
キャラクター:2.5
文章力:2
総合点:13
表現力がとても高い作家さんだと感じました。怪物の文章表現がとても凝っていて良かったと思います。惜しい点としては詰め込みすぎでやや読みづらい印象を受けました。 ・主人公を意味する代名詞を絞る ・この題材で表現に凝るのであればストーリーよりもワンシーンをいかに綺麗に魅せるかに特化する ということを意識すると読み手に分かりやすい4000字以内の作品として成立したと思います。本来文章は上手い作家さんだと思うので次回の挑戦も期待しています!
平均総合点:15.83
【笹月風雲】
お題消化度:2.5
序破急:2.5
ストーリー:2.5
キャラクター:2.5
文章力:4
総合点:14
オリジナリティを発揮する事と、何とも似ていないという事は等価ではない。ひたすら奇をてらう事がオリジナリティではない。オリジナリティを追求する以前に【理解してもらえる事】【分かりやすい事】があらゆる作品の大前提となる。その点においては独自設定、独自キーワードが多すぎてドラマの骨子を見つけることすらできない。11枚小説が必要とする【ヒーロー】の意味を根本から見つめなおしてほしい。意欲は買う。だが〝誰に読んでもらうのか?〟という事を考えてもらいたい。
【水色パンダ】
お題消化度:3
序破急:3
ストーリー:2.5
キャラクター:3
文章力:3.5
総合点:15
んー、なんぞこれ、といいたくなるシュールな作品ではある。色々ぶっ飛び過ぎてて反応に困るのだが、この少年がヒーローということでよいのだろうか?アメコミ的な「こまけえこたぁいーんだよ」という雰囲気はビンビンに感じるのだが、なかなか理解が追いつかない。ストーリーは、なんというか、破綻はしていないようだが、巧くまとまっているわけでもない。山場らしきものもないので、いつの間にか終わっていた、と感じた。文章は短文で淡々と綴っているのでわからないということはないが、ほうほう、と感心する部分もなかった。メデタシメデタシ、でよかったのかな?
【ナロラボ】
お題消化度:2.5
序破急:3
ストーリー:3
キャラクター:3
文章力:3.5
総合点:15
2000年代の異能力ライトノベルが好きな私としてはとても好みな設定でした。わずか4000字にとても練られた設定がつまっていたり、主人公が無能力者という設定にも燃えました。惜しむらくは4000字という字数制限にやや設定を詰め込みすぎた印象があるなぁと。やや置いてけぼり感を感じてしまいました。
平均総合点:15